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伝説の遭難者yucon氏の体験について(1)

   

伝説の遭難者yucon氏の体験について(1)



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 前回、「新潟親子遭難事故について」の記事を書いたところ反響があったので、数年前にネットを騒がしたyucon氏の遭難に関しても一応記事を書いておこうかと思います。

このyucon氏の遭難に関しては、多くの失敗を犯している形ですので逆にここから色々な事を学ぶ事が出来ます。特にアウトドア初心者の方には是非読んで貰いたい内容です。これをアウトドアを楽しむうえで役立てて頂ければ幸いです。


★yucon氏について


yucon氏のプロフィール

 登山暦:2011年から死亡する2013年11月まで
 年齢:当時40代前半
 性別:男
 本名:川崎

 彼はパーキンソン病を患い途方に暮れていた時に"山"に出会いました。その病の進行と闘いながら死亡するまでの間、山を登り続けました。しかし、そんな身体で山登りをする事は自殺行為であり推奨できるものではありません。誰かが止めていればこんな結末にはなっていなかったでしょう。またパーキンソン病の影響か幻覚症状があり、遭難記のどこまでが本当にあった事で、どこまでが彼の幻覚かという議論が未だにネット上では続いています。

 yucon氏は"ヤマレコ"という登山系SNSのヘビーユーザーであり、遭難後もその遭難記事をヤマレコにアップした事により一躍、有名人となった方です。リアルでも山雑誌に取材されたり講演会に呼ばれたりしたようです。


そして、今回紹介する遭難から1年後の冬、御在所岳で再び遭難。救助されたものの翌日に病院でお亡くなりになりました。ご冥福をお祈りします。


★遭難時の装備等


遭難発生日:2012年07月16日(月)~ 2012年07月22日(日)

天候:ほぼ晴れだが5日目に雷雨に襲われる

装備:
・食糧(カップ麺、マッシュポテト2人前、バランスパワー4本)
・飲料水(ハイドレーション2ℓ、炭酸ジュース500ml、水500ml)
・野球帽、モンベル半袖ジップアップシャツの下にナイキドライフィット長袖Tシャツ
 モンベルパンツ、アンダーにメンズタイツ。
・バーナー、コッヘル、ガスボンベ、
・25,000分の1地図、山と高原地図、コンパス、ホイッスル

当日忘れた装備類:
・雨具、ビニールシート、ツエルト、バックライト付きリストウォッチ、ヘッドランプ、GPS


★どのように遭難したか

 今回はyucon氏のヤマレコの記事Blogの記事、あとアウトドア雑誌「山と溪谷2013年8月号」から遭難の内容を抜粋、加筆、修正を行なって記事にしています。※ヤマレコの記事とBlogの記事、山と溪谷の記事で微妙に内容が違います。今回はBlog側の記事を参考にしています。




(※上記の画像をクリックするとAmazonが開かれます)





1日目:2012年7月16日(月)

 まず今回遭難が起きた御池岳の地図を紹介します。
伝説の遭難者yucon氏の体験について(1)


 yucon氏は今回の山行を"土倉岳-御池岳-T字尾根"の周回ルートで計画していましたが、自宅を出発するのが大幅に遅れた為、途中撤退のつもりで家族へ「ノタノ坂、土倉岳、T字尾根、山は登らずに帰ります。帰りは17:00頃」とメモを残し出発することにしました。

しかし奥さんはそのメモを読んで「山に登らないのだったら、このメモは必要がない」として捨ててしまいます。早速この時点でyucon氏が何処の山に行ったのか誰も分からなくなります。

 さらに駐車場へ向かっていると道中、土砂崩れにより封鎖されている箇所があり迂回を余儀なくされ、さらに1時間半ロス。駐車場に到着したのは午前10時半。さすがにyucon氏も少し遅いと感じた様ですが、駐車場で別の登山客1人がこれから登るところを見て安心しyucon氏も登山の準備を進めました。

 登山準備を済ませて登山口へ向います、林道の段階で山ヒルを数匹確認しており少し不安を感じながらも薄暗い樹林帯へ入って行って行きます。この沢沿いの樹林帯の道は山ヒルの危険地帯です。しかしyucon氏はアルコール除菌スプレー準備しており、それを駆使し、樹林帯を抜ける間際まで山ヒルの被害は無かったようです。

それから稜線に出てから、しばらく休憩した後、左右どちらへ進むのか悩みました。

というのも方角的には間違いなく左なのですが少し進んでみると"侵入不可のケルン"(※1)があり、さらには明らかに人の手によって木の枝で道が塞がれていたそうです。すぐに戻り右方向へ進むと程なく土倉岳山頂へ到着、御池岳の衛星峰「土倉岳」にとりあえずは登頂成功。時刻は13時頃。

 時刻も13時と言う事で、このまま御池岳方面を目指しT字尾根経由で下山することに決めたそうです。

 その後、土倉岳を北進し痩せ尾根を慎重に渡り、テーブルランドの端にようやく到達。しかしT字尾根経由で下るのにどれくらいの時間がかかるのか分からず、霧が濃いので長居は無用と決め、直ぐにT字尾根の取付き(※2)を探し始めました。

そしてグリーンのテープがいくつも張ってある取付きを発見し下山を開始します。取付きを過ぎた後一旦は違う尾根に乗ってしまった様ですが、この時はすぐに気が付き来た道を戻りました。戻って注意深く辺りを見るとテープや踏み跡があり、それについて行くと正しくT字尾根に乗ることが出来た様です。

順調に下山は進み、後はT字尾根の突き当たりを左へ進めば山行は終了というところで、
駐車場で見た登山者が反対方向から現れました(以後R氏)


R氏「さっきと同じ所を通ったみたいで同じ手拭い見たので拾ったんだ」


R氏の話しでは、T字尾根の突き当たりまで進み、正しく左へ進んだつもりが道迷いになった様で知らぬ間に戻ってきてしまった様です。そして話しの流れでyucon氏はR氏に同行する事となりました。

R氏はyucon氏よりも5歳以上も年上に見え、装備からも察するにベテラン、会話の中でも「旺文社の登山コースは全部制覇した」との事を言っており、それを聞きyucon氏は完全にR氏を信用した様で雑談に夢中になってしまいました。


...雑談に夢中になった結果、二人で迷ってしまいます。


R氏の提案で、沢へ下りて川を下ろうという事になり、yucon氏も一緒に沢へ降りる事に。しかし沢へ降りている最中5mの高さから滑落、2~3回転しながら沢へ落ちてしまいます。yucon氏は首からぶら下げていた一眼レフが気になり作動確認をし、正常動作したのを確認し安心したそうです。

R氏は滑落したyucon氏に声を掛けて大事に至っていない事を確認すると先行して沢を下って行きました、そしてまた戻って来て一言、

R氏「出口は滝だ、だめだこりゃ。もう一度登り返して稜線へ出よう。」

yucon氏「(滑落してまで下りたのに稜線へ登り返すのか、夕暮れも近いのに...)」

そう思いながらR氏に従い登り返しましたが、途中、沢から少し登った所で足を滑らし両膝を岩に強打。かなりの痛みで出血もあり、しばらく蹲っていましたが何とか登り始める事にしました。登る途中もかなりの薮漕ぎ(※3)でR氏に若干遅れてしまいましたが何とか付いて行きました。


やっとの事で稜線に出て暫く進んだところで二人で休憩。


ここでyucon氏はバランスパワー(※4)の4本のうちの2本を食べ、残り2本をR氏に勧めましたが遠慮されます。そしてそこでyucon氏は自分には持病があり薬無しでは身体がもたないことを説明しました。

休憩を終えて再び歩きだした直後、R氏のザックから水筒が落ちて斜面を滑って行きました。まだ見える場所で止まったのにも係らずR氏は諦めてしまったそうです。

そして尾根を目指しているのに、なかなか尾根が現れない。R氏も高度計を確認しながら首をかしげる。尾根に出ないどころか勾配は急になるばかり、焦りと不安が募ります。不安に駆られていると進行上に大きな岩がありR氏は右に巻く(※5)、しかしyucon氏は上手く巻けず岩の左側を直進する事に。

ここで彼らは一旦別れてしまいます。

日は暮れて薄暗さが増して辺りを見回してみると、遥か先にボタンブチらしき所が見えたそうで、立ち止まりながらもなんとか上へ上へと登っていくと山頂直下15m程の所に僅かなスペースがあり、そこで一人ビバーク(※6)することを決意したそうです。

山頂からはR氏の呼ぶ声とヘッドランプを点灯させるのが見えたそうです、yucon氏もバーナーを点火させ合図を送ります。R氏も山頂でビバークをする様で、山頂から10m程東の地面にシートを広げて横になっていたようです。


眼下には雲海が広がり頭上には満天の星空。月明かり、星明かりのおかげで全くの闇夜ではなく、さらにホタルの群れが飛び交う今まで見たこともない美しい光景が広がっていたそうです。それと同時に遥か下の雲海からは雨音が聞こえていました。

しかしながら、不安から眠れずに夜明けが来るのをじっと待つしかなったそうです。

【用語解説】
 (※1)"ケルン"とは人工的な積み石の事で通常ルートを示す道標や墓標として用いられる。
 (※2)"取付き"とは登り始める地点などを指す言葉、アプローチポイント。
 (※3)"藪漕ぎ"とは藪をかき分けて進む事。
 (※4)"バランスパワー"とはカロリーメイトっぽい携行食、商品名。
 (※5)"巻く"とは迂回する事。
 (※6)"ビバーク"とは緊急避難的野営



2日目:2012年7月17日(火)

 ここでもう一度地図を確認しましょう。T字尾根の途中から道を外れ、沢を登りボタンブチへ進んでしまい、そこでビバークした状況です。
伝説の遭難者yucon氏の体験について(1)


 この日は夜明けから登り始める事にしました。幸いにも雲ひとつない青空。ボタンブチ直下はカレンフェルト(※7)で、崩れやすい岩がゴロゴロしている為、R氏にロープを渡してもらい慎重に慎上へ進みました。途中3回ロープを掛け直し、なんとか山頂へ倒れ込みました。

そこには2月にボタンブチ下のゴロ谷で遭難死したN氏の慰霊碑があったそうです(参照元:山と溪谷 2013年 8月号)

しばらくそこで倒れこんでいましたが、今日が平日で会社へ行かなければならないことを思い出して立上がります。

とりあえず家族へ連絡と言う事で、yucon氏の携帯はバッテリーが切れていた為、R氏から携帯を借り自宅へ電話。しかし留守番電話だった為「危機的な状況は脱したのでこれから下山します」とだけメッセージを入れたそうです。



R氏から下山ルートの相談を受け、yucon氏はT字尾根ルートを押します。R氏も反対しません。その時、yucon氏は「R氏はここまで大変なことにしてしまった責任を感じてか私の意見に反対しない」と感じていた様です。

この日の朝は雲ひとつない快晴で迷い様が無い天候だったのですが二人してテーブルランドを彷徨い歩いたものの、なかなか目的のT字尾根の取付きが見付りません。見付からないままその先にある土倉岳の取付きを見つけました。R氏はそのまま土倉岳のコースを押したものの、yucon氏は頑としてT字尾根を押した様です。

その後、やっとの事でT字尾根の取付きを見つけて下って行ったものの、昨夜の雲海の下から聞こえた雨の影響でしょうか、地面はぬかるみ、踏み後は消えてしまっていました。

しかも二人とも会社の始業時間に間に合わせたくて下山を急いでしまいます、さらにこの時点で二人が持っている水分はゼロという状況で、その焦りがミスを誘発。一度下ったルートが間違いであることに途中で気付き登り返したりを何度もする事となりました。


この時yucon氏自身も自分が相当混乱しているのが分かったそうです。


そして事態は思わぬ方向へ。


yucon氏が見えるテープがR氏には見えないという現象が起こり始めます。


脇の石を見ると「T」の字が横を向いて進行方向を指していたので
「ほら、目印があるじゃないですか!こっちへ進めって書いてありますよ」
自信満々で石を指さすyucon氏。


R氏は何も言いません。


しばらくしてまた道が違うことに気付き、

yucon氏「おかしいな、Tの字が横を向いてこっちを指してたのにねぇ」


R氏「いいや、そんな石は無かった」


そんなyucon氏でしたが、R氏も反対意見を言わなかった為、「R氏も自身が狂っていないと主張できる根拠や自信が無いのか強く反対意見を言われない」と感じた様です。


それから、二人はテーブルランドから少し下りたところでモタついていました。yucon氏は体調のこともあり何度もR氏に先行を依頼したものの行こうとしなかった様です。それをyucon氏は「やはりR氏も自信を喪失しているようだ」と感じていた様です。


そしてyucon氏がクマ除けの鈴の様な音が聞こえる為、他の登山者が歩いていると思い声を掛けました。しかし音は近づいてくるものの、その姿は見えない。


何度も叫ぶ。


それをR氏は黙って見ていました。


...しかし結局、その登山者の姿を見る事は無かったそうです。


yucon氏「せっかく道を聞こうと思ったのに!」


それをR氏は黙って見ていました。


その後、yucon氏が長い尾根を下って行ったのにも係らず、R氏は尾根を下らず、留まって様子を見ていたそうです。かなり下った後、尾根違いと分かり急峻(※8)を登り返さなければならず半泣きになるyucon氏。昨晩も殆ど睡眠を取れておらず、その上水分補給も無いこの状況、体力も精神も尽きたのでしょう。


すると遥か上でR氏が正しいと思われるルートを進んで行くのが見えたそうです。

そして、その後R氏の姿を再び見ることはありませんでした。



 ちなみにyucon氏は遭難救助され暫く経った後R氏と思われる人物のBlogを発見し、その行動を批判したそうです。R氏と思われる人物はBlog閉鎖、音信不通に。それに対してyucon氏は一言、やはり世の中で一番怖いのは「人間」です。
(参照:外部リンク「yucon氏のヤマレコ-R氏について」




その後も何度もルートミスをしながら、6時間掛けてようやくT字尾根の真中あたりの標高967mのピークに辿り着きます。通常この季節、この天候であれば1時間半で到着するコースです。いや、そもそも実は辿り着いたその場所は標高967mのピークですらありません。随分手前の標高1,010mの場所でした。

標高差100m、水平距離でも100m、6時間掛けてこれしか進めていません。

もはや道迷いでは無く自身の衰弱との戦いです。


そこからのまた幻覚が見え始めルートが分からなくなりました。


親子連れや夫婦の登山者を見える。

さらに東西南北全ての方向に目印があり踏み跡があり他の登山者が進んで行くのが見える。

しまいには国道などにある青色の大きな道路案内板が見えたそうです。



T字尾根最高点から30m程下った所で遂に倒れ込みホイッスルを吹き助けを求める。

何度も何度も吹いて「助けて下さ~い」と叫ぶが誰も来ない。


遥か上の稜線に人の気配がする。

学生のような登山者がこちらを見ており、少し近寄り掛けて躊躇している。

その影に向かって叫ぶがいつの間にか消えていた。




30分ほどしてT字尾根最高点になんとか戻り、登山道脇に倒れ込んでしまいます。

誰か通りかかったら水を貰おう待つが誰も来ません。



自分が居る事を気付かれないように迂回して逃げていく家族連れの登山者がいる。

他にも夫婦やカップル、父子連れの登山者がいる気配がするが誰も助けてくれない。



その後もホイッスルを何度も吹き「誰か助けて下さい!」と呼び掛けたものの反応は無し。
遠くの物陰からこちらの様子を窺がう気配だけがする。




...皆さん、もう気が付いてますよね。


そうなのだ、全て幻覚なのだ。



連休明け平日のT字尾根に一体何人の登山者が訪れるだろう、一人か二人いれば多い方でゼロの可能性の方が高いはず。
ましてや上級者向けのコースに親子連れなどいる訳が無い。

yucon氏も気が付きました。



 15時を過ぎ、脱水症状はさらに進行、「水」への思いは募るばかり。幻覚を見つつも川の音のする方へ降りて行きました。降りている途中で「また登り返すのが大変だ」迷っていると、川岸に水量を計測する機械の制御盤の様なものがあり、係員のような女性が機械を触っているのが見えました。さらによく見ると、手前にも係員達の使っているトイレ(便器だけ)やセンサーの様なものまでが見えました。
(※この係員も記事よって女性1人だけだったり女性1人男性2人だったりする)

「急な沢だが降りて水を飲み、係員に自分の存在を知らせ助けを呼んでもらおう」
yucon氏の中でそういう計画が出来上がり斜面を降りて行く事しました。


木にロープを掛け、下の木まで降りることを繰り返しましたが、ついにはロープを掛ける木が無くなってしまいます。しかし下を覗きこむと美味しそうな水が流れている沢が見えた為、そのまま3m以上の高さから落下。全身が痛みましたが何とか上体を起し川の水を手ですくい口へ運ぶ、その瞬間、yucon氏は身体が生き返るのを実感したそうです。

しかし落下の衝撃で身体中が痛み、もはや崖を登り返すことも出来ません。
時刻も16時半を過ぎており夕暮れは目前です。

この日はもう体力の回復を待って、崖を登り返すのは明日の朝からにしました。

もしかしたら水量計の係員が来るかもしれません。そう思いながら辺りを見回すとさっき機械があったところは、ただの木が生えているだけで、どうやら全て幻覚だったようです。


水分補給出来た事で安心したのか、少し眠ってしまった様です。ふと気が付くとまだ幸いにも明るかったものの、寝ている間に顎と首筋の間にヒルを刺されていました。慌ててヒルを剥がしたものの出血は止まらず、タオルで止血しつつも完全に暗くなる前にお湯を沸かしラーメンを食べる事にしました。残る食料はマッシュポテトのみです。


そうしている間にあっと言う間に日は暮れます。

ここは谷間の沢、昨夜のボタンブチとは違い、真っ暗です。

深夜谷底から稜線を見上げると上に人の気配を感じたました。しかもそれは捜索隊で自分を見つけてくれた様です。こちらの存在をアピールする為ガスバーナーを点火し叫びながら、明日の救出を楽しみにそのまま寝てしまいました。


【用語紹介】
 (※7)"カレンフェルト"とは石灰岩が林立した地形の事
 (※8)"急峻"とは傾斜が急で険しい場所の事



3日目:2012年7月18日(水)

 この日、yucon氏は昨夜見た捜索隊が来てくれるのを、ただひたすらに待つ事にしました。

しかし夕方頃、深夜の捜索などあり得ず、昨夜の捜索隊は幻覚だった事に気付きました。

そしてバーナーのコックが開きっぱなしでガスが空になっている事に気がつきました。



そしてこの日yucon氏の家族が捜索願を提出。午後から捜索が開始される。


4日目:2012年7月19日(木)

 朝起きると、また救助隊が来ると言う幻覚が始まっており何もせず待つ事にしました。

上流の方で声が聞こえました。

やっと救出部隊が来たような気配がします。

しかし一向に救出活動が進みません。

正午を過ぎ少し不審に思いましたが上流の方から相変わらず声が聞こえてきます。

何か作業を進めているように感じました。 


気が付くと15時。


上流の声が聞こえる場所へ行くと誰も居らず、



また全て幻覚だった様です。



夕暮れになり横になると手首を山ヒルが這っていました。
既に両手は10ヵ所以上ずつ刺されていました。


5日目:2012年7月20日(金)

 この日ついにyucon氏は自力脱出を実行を決意しました。
ここでまた地図を確認してみましょう。
伝説の遭難者yucon氏の体験について(1)

 yucon氏はT字尾根の途中から南に逸れてしまい小又谷にいるものと勘違いをしていました。そして、そのまま沢を下れば川と合流して川を下れば出られるものと考えていた様です。しかも手持ちの地図を見ると間に堰堤や滝がある様に記されているのは分かったそうですが、きっと高低差は少ないものだろう、そして明日には確実に帰れるだろうと楽観的な予想で沢下りを決行する事にしました。

出発前、最後の食糧のマッシュポテトを沢水で溶き半分食べます。

沢を下って行くと高低差20mはあろうかという滝にぶつかり、進めなくなります。
(※この滝に関してもBlogでは20m、ヤマレコでは50mと表現されており、どちらが正しいかは謎です)
伝説の遭難者yucon氏の体験について(1)
(※これが実際のその滝を後日撮影したものらしいです)

いっその事このまま飛び込もうか迷っていると雨が降り始め正気に戻る事が出来た様です。

その雨は夜まで続き、落石や鉄砲水の危険性から中州で一夜を過ごす事にしました。


 深夜、真っ暗な中yucon氏が居る所にも水が流れてきました。もう座ったところから一歩も動けない、もしかすると中洲も水の流れで削られており一歩横はもう激流の中かもしれない。そう思うと一歩も動けなくなったそうです。尿意を催したものの、もし立ち上がって沢に落ちれば終わりという不安から一歩も動かず尿はその場に垂れ流したそうです。


5日目:2012年7月21日(土)

 雨は早朝に上がったものの身体へのダメージは相当のyucon氏。雨が上がった後すぐに眠り込んでしまいます。

起きた後、遂に地図とコンパスを準備し再度自分のいる地点を割り出すと現在地はT字尾根の北側に位置するゴロ谷と判明。それまでずっと反対側の小又谷と思い込んでいました。

そして昨日作ったマッシュポテトの残りを腐っているとわかりながらも食べたそうです。
今まで食べた中で最も不味い食べ物だったそうですが何かしら摂取しなくては身体がもたないので我慢して口へ運んだとの事です。

そしてyucon氏の身体に衝撃的な異変が、以下yucon氏のコメント。



そういえば最近股間がむずむずしている。

恐る恐る肛門付近を見ると自分の肛門から次から次へとウジ虫が出てきている。

どうやら自分の腸内で卵からかえり肛門から出ていくようだ。

出口がないと気に入らないのか股間の皮膚に噛みついて暴れるのでとても痛い。

沢の水の中に卵がありそれを飲むことにより体内でふ化するようだ。

これも鹿の糞が媒体となっていて鹿の増加が関係しているのか。




 思案を重ねた結果、沢を下るのではなく、稜線まで上がれば誰かに会えるだろうという考えで尾根まで上がる計画を立てました。しかし12時過ぎから出発し比較的勾配の少ないガレ沢から取付き慎重に登って行ったもののかなり衰弱していたのでしょう、8割進んだところで日没を迎えてしまいます。

斜面途中の木の根周辺にスペースを見つけ木に跨る姿勢で夜を迎える。

 この夜はどこからかテレビの音声が聞こえてきたので呼び掛けをしたそうです。するとカサカサとサンダル履きで駆け寄ってくる音がしたので、警察へ連絡をお願いをしたところ近くで電話を掛けているような会話が聞こえてきたのでお礼をしたそうです。


 深夜寝ぼけて足を踏み外し落下、たまたま触れられた木の枝に掴まり止まったが、足は完全に宙ぶらりん。微動だに出来ない姿勢で一晩過ごし小便はまた垂れ流しだったそうです。


6日目:2012年7月22日(日)

 朝起きると、なんとかまだ木の上でした。

この日も頭の中では救助隊がこちらに向かっているという状況が出来上がっていました。


ほんの少し上の尾根の方からもいろんな人の声が聞こえ辺りがざわついていました。

近所のおじさんの声、飼っている犬の声、聞き慣れた声がたくさん聞こえます。

そんな雰囲気の中yucon氏は木の上で安心して待っていました。

昼頃のどの渇きを訴えるとお茶を用意してくれると言われます。

yucon氏は楽しみにして待っていたものの、お茶も出ないし救助も来ません。


気付いた時は既に遅く13時半。

沢から持ってきていた水ももう空です。
そしてもう一度沢まで降りたらもう登り返せないのが分かります。


しかし諦めかけたその時、下の沢から声が聞こえてきました。
しかもyucon氏の名前を呼んでいました。

こちらからも叫んだものの声が届かないので滑り落ちるように下りました。


半分程降りた所でコッヘルで叩き大きな音を出してから投げ落としたりもしました。
一眼レフカメラも投げました。
望遠レンズも投げました。

それでも下の人には気付いてもらえません。

残り3分の1のところでザックも投げ落としました。

yucon氏は半ばヤケクソ気味に飛び降り様としました。


すると会社からも捜索に来てくれているのか同僚の女性の声が聞こえます。

「川崎さんの為に、ここにジュースを置いていこう」
(※川崎とはyucon氏の本名)

それを聞きブレーキが掛けるyucon氏。
「死ぬまでに彼女が置いて行ってくれたジュースを飲もう!」
そう決意したものの、2m程滑落、途中でメガネも紛失してしまいます。

沢に降りられたものの全く動けなくなりました。


そして、もちろん下には誰もおらず、全て幻覚でした。


辛うじて這い蹲り沢の水を飲んでいると、
川の向こうに親子の3人連れと中年男性が見えました。

「三途の川か」

そうyucon氏が呟くと川の岸辺に先程のジュースが見えました。
しかし少しでもジュースに近付こうとするものの、たった数cmも進みません。


川の向こうの人達が楽しそうにしているのが見えます。


そしてラジオ放送が流れていて野球中継を放送が聞こえます。


 yucon氏は後一日は死なないだろうと計算をしていましたが、肛門からはウジ虫が誕生し続けており、全身山ヒルの噛み跡だらけ、脇腹もムカデにやられているこの状況を感じ、眠ったら二度と目が覚めることは無い様な気がしたそうです。


救出

 2012年7月23日(日)のこの日は三重県山岳連盟の救助隊が前日から捜索を行なっており、そのうちの一班がボタンブチからN氏(上述した過去の遭難者)の遭難地点を経てゴロ谷に下りるルートを捜索していました。

16時ごろ登山者から遺留品が見付かったとの連絡が入った為、その方面に向かう事になりました。

そしてついに17時40分頃、yucon氏の最後の力で振り絞って振った手を隊員の一人の女性が捕らえました。





その時は突然やって来た。



人の気配がする。

久々に人間の気配だ!

2人程の人影が見える。


最後の力を振り絞り手を振る、声にならない声を振り絞る。



一人が近づいてくる。

女性だ。


「遭難してます。川崎と言います。」


女性は驚いた表情を見せ「生きてる!よかった!」と叫んだ。


歓喜の声と一緒に複数の人が来るのがわかった。

「水を下さい!」

アクエリアスを一口貰った。

これはyucon氏の人生の中で一番美味しい飲み物だったと謳っています。




さっきまで川の向こうに居た人たちの姿はどこにも見当たりません。
岸辺にあったジュースも探してもらいましたが見当たりません。


しかしyucon氏の中ではまだ半信半疑でした。
もしかするとこれも幻覚かもという疑念が振り払えません。


「川崎さん!」と呼ぶ声に目をやると色黒の精悍な男性が居ました。

彼はヤマレコ仲間でyucon氏が師と仰ぐToshiという人物でした。
伝説の遭難者yucon氏の体験について(1)
(※yucon氏のBlogから転載、足元の男性がToshi氏)


そして、18時55分、時間ギリギリだったものの県防災のヘリで搬送してもらえる事となり救助となりました。
伝説の遭難者yucon氏の体験について(1)

★今回は一旦ここまで

 あまりにも記事が長くなりすぎた為、今回はここまで。


この遭難記を読むと結構最初の方から「あれ?」ってところありますよね。オカルトっぽい要素もありつつも多くの間違った行動をしていたのが分かりましたか?次回はそういったところを中心に解説をしていきたいと思います。

それでは皆さん良いアウトドアライフを!それでは、また!

合わせて↓この記事もどうですか?
伝説の遭難者yucon氏の体験について(2)
2018年6月10日10時00分更新


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